5月21日の朝、日本列島では金環日食を観測することができました。
地球、月、太陽が一列に並び、
およそ4分のあいだ、太陽の中に月がすっぽり入って、
太陽がリングのように見えるたいへん珍しい現象です。
日本列島の各地で金環日食を次に観測するとしたら、それは300年後。
近ごろ、日本中の人たちがこのチャンスを逃すまいと、
ちょっとした金環日食ブームに沸き立っていたのです。
娘の通う小学校では、金環日食の観測時間がちょうど朝の登校時間帯とかさなるため、
希望者だけいつもより早く学校に来て、校庭で日食の観測会が開かれました。
これは多くの小学校で行われたでしょうし、
他にも、天文クラブや科学館などでもイベントが行われました。
より金環をはっきりみるために、島へ渡るツアーに参加した人も大勢います。
ところが、日食の前日から雲行きが怪しく、
当日の朝6時ごろは完全に曇っていました。
残念に思っていたところ、
幸運なことに、日食が始まる頃から急に雲が晴れ、晴天となり、
金環日食が終わるまで完璧に観察することができたのです!
(本当に不思議なことに、日食が終わると、また曇りました)
日食が始まった7時過ぎ。
わたしが庭に出ると・・・やっぱり。
木漏れ日の影が、すべて三日月のような形をしています。
太陽がかけていて、その形が影となって映し出されているのです。
日食を観測するためには専用のメガネが必要です。
肉眼で太陽を見てはいけませんから。
そこで、いろんな所で日食メガネが売られていたのですが、
わたしは、つい買いそびれてしまいました。
だって、どこもあっという間に売り切れているんだもん。
そしたら、夫が 「ウチには、いい物がある。」
と言ってなんか妙な物を持ってきました。
ちょっとうまく説明できないんだけど、
彼が言うには、(趣味の日曜大工で)溶接を行う時に使う「顔カバー&メガネ」だそうです。
「・・・。 これ、本当に大丈夫?」
かなり不安になりながらも、
まだ寝間着で朝ごはんを食べている息子を呼び出し、
日食の様子を観察しました。
その「顔カバー」のガラスを通して私が撮影した太陽の写真です。
緑色なのはそのガラスのため。
普通のデジカメだから小さい太陽だけど、ほら、欠けてきてるでしょ?
肉眼では、もっと大きくみえました。
とてもきれいで不思議な思いでした。
足元を見ると、ほら、さっき三日月だった影の形が、今はリングになっている!
ああ! 見渡してみると一面にリングの影がたくさん!
今この4分間だけ、輪っかの光が降り注ぐ世界なんだ。
溶接用「顔カバー」ではなく、デジカメでもなく、
普通に立ってあたりを見たわたすと、なんか、いつもと違う。
いつもの景色なんだけど、確実に、光が違う。
私の息子の顔も、絵に描かれた顔のように、ぼやけて遠く感じる。
金環日食で太陽がリングになったことよりも、
わたしは降り注ぐ太陽の光が、確実に違って、
一瞬、見慣れた世界が別の世界に感じられたことが、一番ステキでした。