9月22日は中秋の名月といって、一年で最も美しいといわれる満月を愛でる日で、
日本各地で様々なお月見イベントが開かれました。
その日の朝、浜松に住んでいるこのブログの読者の方が、
浜松の蜆塚(しじみづか)という町にある博物館でお月見の会があることを教えてくださり、
私は子どもたちと出かけることにしました。
博物館の広い庭の一部が会場。
今夜は満月を愛でながら日本古来の楽器「尺八」の演奏が聴けるとのこと。
会場につくと博物館の人がお月見のお供えを用意していました。(上の写真)
お月見のお供えに欠かせないのは、もち米の粉で作った小さくて丸い団子。
ちょうど今ごろ野原に生えているススキの穂。
そしてサトイモやカキ、クリなど。
誰に供えるのかというと、これまた日本独特の考え方で、
特定の神とかではないのです。
月や土やその他様々な自然に対して、生かしてくれていることを感謝します。
さて、尺八のコンサートが始まりました。
(月見と尺八というのは、特に何も関係なのですが。)
実は私も尺八の演奏を聴くのは初めてでした。
以前、フランス人の友達から尺八の音色がいかに素晴らしいかを教えてもらったことがあります。
そのとき私は「・・・・へえ~。」っていう感じ。
ほとんどの日本人がそうだと思いますが、
尺八を知ってはいるけど、聴く機会もないし、特に知識もない。
フランスをはじめ、海外のほうが人気があるのかもしれません。
尺八のルーツは紀元前に遡り、
奈良時代(710年~794年)にインド、中国を経由して日本に入ってきました。
その後、ワビサビの文化とともに、日本独特の楽器として進化しました。
この写真の演奏家たちのファッションは江戸時代の虚無僧(こむそう)スタイルです。
江戸時代、戦争が少なくなって武士が職を失ない、
なかには浪人として内職をして暮らしたり、このような虚無僧になって旅をしました。
虚無僧は街角で尺八を吹き、お金をもらって生きていました。
頭にかぶっているのは天蓋(てんがい)というカゴのようなもので、
ミニマムな空間が自分の宇宙であるという思想を反映しています。
夜になって、いよいよ尺八の音色がドラマチックに聴こえてきます。
尺八は竹でできています。
5つの穴しか開いていないのに、3オクターブの音を出します。
口や顎の位置を変えて音色を変えるのです。
尺八のために作曲された伝統的な曲は180曲ほどしかありません。
鶴が巣をつくる様子、波が打ち寄せる様子、滝が流れ落ちる様子など、
ほとんどが自然風景を演奏で表現します。
そして、自然を描写しているだけのように見えて、
実は、自分自身の心の葛藤や怒りや迷いを尺八の音に感じ取るのだそうです。
・・・深いね。